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舞姫
2008/03/15(Sat)
 宝塚花組東京特別公演『舞姫 MAIHIME』(原作:森鴎外,脚本・演出:植田景子)。
 去年の宝塚バウホール公演(=若手を主演に配した小規模公演。このときは10日間限定)のときは兵庫まで行く覚悟ができず、しかも公演はじまってからは好評の嵐に歯噛みした作品。東京での上演(1週間限定)が決まったときは小躍りして、前売り初日は旅行先から携帯電話でチケットをとったのも今となっては遠い過去のよう。やっと、やっとたどりついたMy初日。午前・午後の2公演連続観劇で観てきました。


 良かった。
 本当に美しくて哀しくて切ないお話でした。


 お話はしっかりした構成で(原作の脚色もうまい)、役者は演技達者さんが多くて、音楽はどれも綺麗。大道具や小道具の美術も素晴らしい。
 バウ公演が絶賛されていたのはネットで見ていたけれど、これは評判になるのもうなずけます。ぶっちゃけ、ヅカって「作品」より「役者(贔屓)」で見る分野だと思っていたのですが(そう考えないと作品のアラが気になって耐えられない)、これは「作品」として本当に良かった。宝塚観劇で初めて泣いたくらい。

 また、「原作が好きな人より、『舞姫の主人公ってサイテー』と思う人にオススメ」という意味もよくわかりました。私も原作の太田豊太郎(主人公)は嫌いですが、脚本のアレンジがすごく上手に効いている(帰国への心境の変化に説得力がある)舞台の豊太郎は好きです。

 千秋楽のチケットも入手してあるのですが(こっちは友達と観劇予定)、感動を忘れないうちに勢いで書いていきたいと思います。以下、興味があってネタバレ気にならない人だけどうぞ。


 感想は、項目ごとにまとめてみます。では、つれづれなるままに。

【ストーリーなど】

 主筋は原作と同じですが、登場人物が増えていますね。ドイツ人の大学教授とか、イヤミな国費留学生仲間とか。まあ、舞台は役者に「個」としての存在を与える必要があるので(モブ以外)当然でしょうが。その中でストーリー展開に重要な意味を与える追加人物が2人。
 1人は豊太郎の妹。原作の豊太郎は母子家庭で、免官によって母が自害することで「日本に待つ人がいない(=帰らなくても問題ない)」状況になるんですね。それが、妹が一途に兄を信じて待っていることで、帰国への理由につながっていく。ただじっと正座して兄を待ち続ける姿は、エリスと並べることで、憎らしいほど対照的な存在になっていました。あれはすごい。
 もう1人は、原芳次郎@日本からの私費留学生の画家。この芳次郎(とドイツ人の恋人マリィ)がいることで、帰国への過程が劇的に変わります。かつての芳次郎は現地の美大に通う優秀な学生だったけれど、実家からの援助がなくなって学校を辞めてからは、売れない画家に(生活は絵のモデルをやっているマリィ頼り)。現地の日本人会との折り合いも悪い一匹狼。そんな芳次郎は豊太郎に「官僚主義的な日本人にはヘドが出る」「日本では油絵はできない、俺はこの国で大成するんだ」と力強く語る(それに感化されたことで豊太郎もエリスへの思いを走らせることになる)。それなのに、流感をこじらせて病床についた後はもう……。
 かなり危険な状態になった芳次郎を見舞いに訪れた豊太郎に、マリィが「ドイツ語がわからなくなっちゃったのよ。日本語でわからないことを言うばかりで」と嘆く。豊太郎が日本語で「何か食べなきゃダメだ。マリィの作ったスープは好物だったろう」と食べさせようとすると、スープをよけて、ぼそりと言うんです。「豊さん……おかゆさんが、食べたいなあ」と(この一言で涙腺決壊)
 ドイツで成功してやるんだって気を吐いていた青年が、官僚主義的な日本人を嫌っていた青年が、日本に帰るつもりはないと笑って言った青年が、本当は故郷を渇望していた。今の日本には油絵を描く環境はなくて、ドイツでも日本人は半人前とバカにされて。どちらにも居場所がないから、意地を張ってドイツで頑張るしかなかった人生。故郷に帰れず志半ばで死ぬことを「悔しいのう」と泣き笑いながらつぶやく。「100年後の日本はどうなっているかなあ」と文化が充実して海外と対等になった日本を夢見て「日本を、頼むな」と言って死んでいく。
 そんな死を見てしまったら、日本のために尽くしたいと官職への復帰を決意したり、ドイツに居続けることへの不安を覚えて帰国要請に応えてしまうのもやむをえないと思うのです。

 お話の変更として美しいのは、舞扇のエピソード。エリスに舞扇をプレゼントして、要返し(日舞の技というか扇さばき)を教えてあげるんですね。エリスが踊り子であることと、豊太郎が日本人であることの象徴である舞扇。舞扇を持って嬉しそうにバレエを踊るエリスは本当に可憐で、豊太郎がいとおしさを募らせるのも無理ないと思いました。
 心が壊れて豊太郎のことがわからなくなっても、舞扇だけは手放さないエリスとの最後の場面も美しかった。ただ、これは原作でいう「おむつ」の代わりなんですよね。エリスがもともと精神的に繊細な少女であるという設定は「あり」なのかもしれないけど、想像妊娠というオチはさすがにご都合主義すぎる気もします。「妊娠した女性を置いて去る」ことが、すみれコード(宝塚的放送コード)にひっかかっちゃったんでしょうか。

 あ、そうそう、忘れちゃいけないエピローグ。幕が下りた後に、もう一度幕が上がって豊太郎とエリスがめぐりあえる演出は泣けました。お話が悲劇で終わるだけに、救いを用意してくれてありがとう、と。

 褒めてばかりでもアレなので、微妙だった点もいくつか(主に設定)
 個人的に気になったのは、「ヨーロッパ大陸が見えてきたぞ」という台詞(ヨーロッパはユーラシア大陸ヨーロッパ州)とか、「東大を首席で卒業」(当時は「帝国大学」。この程度ならわかりやすくする必要もないかと)とか、「次期首相候補」(明治19年は初代総理大臣の頃で、その初代首相こそがドイツ憲法をもとにした大日本帝国憲法のために奔走した人物だったような)とか、豊太郎がドイツにいたのは1年間だけっぽい(豊太郎より先に帰った岩井くんは3年の留学予定を途中で連れ戻されたのか?)とか。あと主人公って軍属でしたっけ?(作者は軍属の留学生だったけど、小説でその描写を読んだ記憶がなくて。そして軍法の勉強をしていた若造が大日本帝国憲法に関わる……の?)とか。私がちゃんと見てなかっただけのものもあるでしょうし、最終的には「これはフィクションだ」と割り切っちゃえばいいんですけどね(ヅカならいつものことだ・笑)


【舞台装置】

 シンプルで美しかった。淡色のパネルが良い効果を出していました。淡色の壁のような物なんだけど、襖のように控えめに描かれた草花の模様があることで、和風にも洋風にも見えるんです。そのパネルが壁やドアになり、場面転換にも効果的に使用されていて、ただただ感嘆ものでした。宝塚の大劇場に行くと背景が「絵」のものが多いのですが、舞台は観客の想像力を信じていいと思うんです。むしろ、それを想像させる余地のある方が、見ていて楽しいし。
 場面転換の使い方としては、登場人物の登場と退場のさせ方が憎らしいほど上手かった。2幕の帰国を決意する場面なんて、相沢が豊太郎を説得しているところにパネルがさっと開いて天方大臣が登場して「君は日本国にとって必要な人間だ」と言い出し、最後に一番奥のパネルが開かれて豊太郎母と芳次郎が現れる。亡くなった2人が懐かしい祖国を背景に登場した瞬間「ああ、これは豊太郎折れるわ」と思ったもの。うまいなー本当に。
 舞台の上に置かれた2枚の床板(?)も同様のシンプルかつ絶妙な使い方をされていましたね。個人的には豊太郎と相沢が再会して歩きながら語らう際の板の動きと、帰国を迫られた豊太郎とエリスの関係を表した床板の使い方にやられました。特に後者の豊太郎もエリスもお互いを想って、互いに向かって歩もうとするのに、中央から二つに分かれた板がどんどん二人を遠ざけていく……音楽との盛り上がりもあいまって、切なくて仕方ありませんでした。


【音楽・歌】

 歌の比重の大きい作品でしたが、どれも良かったと思う。ミュージカルだから基本的には洋風の音なんだけど、場面によって効果的に和楽器(琴や笛)が使われていて大和心をくすぐられました。メロディも綺麗でしたね。豊太郎が苦悩の末に帰国を決意する際の音楽の盛り上げ方(追いつめ方)は特に泣けました。歌詞はわかりやすいし、リプライズの使い方もうまい。ウェストエンドやウィーンミュージカル等の素晴らしすぎる音楽を知ってしまっているので、あれらと比べたら「絶品」と言うことはできないけれども、なかなかの佳作だったと思っています。
 歌は……おうたヘタだと言われがちな人が多かった中では、良かった方なのでは……と思います。少なくとも「勘弁してほしい」というのはなかった。私の中では合格ライン。
 歌ウマな私の贔屓さんは、相変わらずお上手でした(耳福)。1幕最後の豊太郎が免官されたときの歌と、2幕の帰国を迫るときの歌が好きかなあ。豊太郎への絶大な信頼と心遣いにあふれた厳しくも優しい歌声に心がゆさぶられます。エリスとのやりとりの歌も上手いとは思うのですが、こっちはやや「歌い上げている」印象を受けました。面識のない相手だから、豊太郎へ歌いかけるときより硬い声になるのは当然だろうけど……相沢よ、君の優しい声は豊太郎にしか注がれないのか?(苦笑)
 〔3月20日追記〕表情が見える席で観劇した結果、エリスと相沢の場面で、相沢くんは「歌い上げて」はいるものの「すごく苦しそうな表情」で彼の苦悩が伝わってきたことを付け加えておきます。豊太郎への想いよりは劣るかもしれないけど(苦笑)、エリスにも誠実な人だった。良かった。


【役者】

 主演コンビをはじめ主要キャストはほぼ全員「素晴らしかった」と思います。あえて個人名を挙げるなら、

●豊太郎:原作の優柔不断男とは別人と思えるほどの生真面目な好青年を熱演。舞姫の主人公をイイヤツだと思える日が来るとは思わなかった。
●エリス:泣けるほど可憐。舞扇を持って踊る場面は本当に綺麗で幸福そうで、それだけに相沢と再会後の豊太郎を見る視線~心の崩壊の流れは切なかった。
●相沢:豊太郎を心底信頼して気遣う「得がたき」親友。エリスを追いつめてしまう行為さえ、友を案じたゆえという説得力があって、イヤな男じゃなかった(※マイネ贔屓)
●芳次郎:泣かされた。1幕のエリスへの恋情を語る豊太郎に「豊さん……いや、なんでも」と言う意味が明らかになる2幕の臨終シーンは本当に圧巻。
●岩井くん:コメディ担当。ちょっとオーバーな演技な気もするけど、マジメで可愛くて、暗くなりがちなお話をやわらげていて良かった。
●清:落ち着いた妹(日本子女)、という印象が、2幕で日本で1人きりでひたすら兄を待ち続けることで、強力な存在感を放つ。「忍」の演技に説得力がありました。
●倫:古き日本の武士の母。黙って立っているだけで、母の教え(何事もお家のため)を体現していたと思います。
●天方大臣:男役の中で唯一の専科(花月雪星宙に属さない・そこそこ年齢のいった先輩が多い)。大臣としての威厳と重みがあって、舞台を締めてました。さすが。

……の演技が好きでした。
 でも、今回は2回とも2階席の観劇だったので、千秋楽に1階席で見たときに改めて感じたいと思います。役者さんの表情とかもちゃんと見えるといいなあ。


 まだまだ書いてないことがいっぱいある気がするのですが、今のところはこれくらいかな。思い出したらまた追記するかもしれません。
 『舞姫』は本当に素晴しい舞台だった。スタッフ・キャストの皆さん、ありがとうございました。

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