2017 10 ≪  11月 123456789101112131415161718192021222324252627282930  ≫ 2017 12
スポンサーサイト
--/--/--(--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事のURL | スポンサー広告 | ▲ top
イリアス
2010/09/10(Fri)
 久しぶりの観劇。ホメロスの叙事詩『イリアス』です。
 18:30開演なのに、仕事が終わらず会社を出たのが17:50だったので、間に合わないかと思いましたヨ(何とか5分前に着くことができましたが)。今日印刷所に送った原稿の初校は念入りに見ることにしよう……

 舞台見るのはかれこれ半年振り(!)になるのですが、やっぱりいいですね。生の舞台が一番好きです。テレビと映画は心惹かれること少ないのに、ヘンな話ですけど。
 劇場に行くといろんな舞台のチラシをもらえます。久しぶりに作品情報を知ると面白そうなのがいっぱいあってイカンですね。三谷作品とか、好きな女優さんの出演作品とか、『銀河英雄伝説』とか(ラインハルトの声やってた人の名前も載っていたんですが、何をやるつもりなんだこの舞台)。節約生活を心がけていたのに、行きたくなるじゃないか。どうしよう。
 チラシといえば、今回の『イリアス』のチラシを入手できませんでした。普通は事前に他の舞台公演でばら撒くけど、余っていたら公演中も入っているのに。私が他公演をしばらく見てなかったから仕方ないのですが……悔しい。観劇した作品は「チケット」「パンフレット」「チラシ」を一通り残しておくのが私の正義です(笑)

 では、そろそろ作品自体について。
 有名なお話だけど、一応ネタバレ回避。


 『イリアス』とは「トロイア(イリオス)の詩」という意味で、紀元前13世紀ごろに起こったトロイア戦争(の一部)を描いた物語です(パンフレットより。一部改)

 トロイ戦争は有名ですよね。「一番美しい女神へ」というリンゴを三人の女神が争ったことから始まったギリシア連合(アカイア)とトロイアの戦争。長年に及ぶ戦争の末、ギリシア軍が巨大木馬を置いて港から姿を消してしまったのを見て、「ギリシアが神への供物を置いて逃げ帰った」と木馬を戦勝品として町に持ち帰り、木馬の中に潜んでいたギリシア兵たちが町の内部からトロイアを破壊した、という話。
 『イリアス』は、その戦争のうちのほんの50日くらいの出来事の話です。ギリシア連合軍一の武将アキレウス(人間の王と女神の子で、アキレス腱の由来になった人)が自分の女をギリシア連合軍の総大将に奪われた恨みから戦争放棄して引きこもったら、自分の代わりに出陣した親友が敵大将ヘクトル(トロイア王の息子)に討ち取られてしまう。アキレウスは怒り狂って出陣し、仇討ち成功。最愛の息子の死を嘆き悲しむトロイア王はアキレウスに会いに行き、息子の遺体を返してもらうように頼み込む。王との対話を経て、アキレウスは遺体を返す。ヘクトルの葬儀をもってイリアスの物語は幕を閉じます(アキレウスの最期や、さらにその後にあるトロイア戦争終焉の様子は描かれていません)
 『イリアス』は口誦詩です。全部読んだ朗読劇では9時間くらいかかるとか(この叙事詩を広めた当時の吟遊詩人はパネエと思います)。そんなストーリーを3時間くらいの舞台にまとめるのですから、結構あちこち省略してあるのでしょう。戦争シーンはガンガン削っていたようです(戦争の発端となったトロイア王子(スパルタ王の妻を女神アフロディテにもらって逃げた・笑)とスパルタ王(妻を奪われたギリシア連合軍副大将)の一騎打ちとか、アキレウスひきこもり中のヘクトルの活躍とか、復讐の鬼になったアキレウスがヘクトルが出てくるまでなみいる武将をなぎ倒していくところとか)。「誰にもその予言を信じられない」という呪いをかけられた、トロイア滅亡を予言していたトロイア王女の出番も少なめだった(と思う)し。
 でも、それらを除いて、肝となる部分を抽出した3時間の『イリアス』は、めっちゃ面白かった。やっぱギリシア時代の物語は壮大だな~。

 書きたいことはいろいろあるけれど、一番感動したところから。やっぱりクライマックスがすごかった。仇討ちを果たしても親友を殺された怒りは収まらず、ヘクトルの遺体を馬車で引きずり回し続けるアキレウス(ヘクトルの遺体自体は神様の加護で傷ついても翌朝には綺麗になっていたそうですが)。心を痛めるトロイア王は息子の遺体を返してもらうためにゼウスに加護(つーかゼウスの部下ヘルメスの力)でギリシア軍のアキレウスの元に単身で行く。そこからの流れは、あらすじを知っていても、震え上がるほど良かった。
 アキレウスはトロイア王の息子をたくさん殺している。最愛の息子ヘクトル以外も、たくさん。そんな男の手にキスの挨拶をして、頭を下げるトロイア王。トロイア王の態度に動揺し、平静を装うアキレウス。続けて、アキレウスは息子の遺体の返還を求める。王様が、一人の武将に頭を下げ続ける。一切の怒りをアキレウスに向けることなく、ひたむきな親心を伝え続ける。そのトロイア王の言葉と姿が、アキレウスの怒りを溶かしていく。震える心を押し隠し、死してもなお憎かった遺体を「トロイア王を悲しませたくない」と清め、葬儀の間の休戦を約束し(=憎んだ男が正しく冥府に導かれることを許し)、亡くなった親友に敵を渡すことへの許しを請う。亡くなった息子と対面した王は、わが子を抱きしめ、はじめて思う存分泣く。
 トロイア王に葛藤はなかった。「アキレウスは敵だ」とさえ思っていない。誰であっても息子を返してくれるなら、最大限の敬意を払う存在だった。「息子の死以上につらいことなどない」から、自分が殺されたって構わない。だから、何の迷いもためらいもなく単身で会いに行き、手にキスをして、頭を下げることができる。
 大切な者を殺されることは「怒る」ことでしかないアキレウスにとって、それは初めて見るものだったのでしょうね。動揺し、理解し、怒りの刃を納める過程が、静かな演技なのに染みるように伝わってきて、見ているこちらが切なかった。
 このシーンは、二人の役者さんが本当に素晴らしかった。内野さんは私の信頼クオリティでしたが(「背中で語る演技」や「あふれる感情を抑えた演技」が本当に素晴らしい人だと思うんです)、平幹二郎さんも素晴らしかった。舞台ではよくお見かけする名前ですが、一般的にも有名な人なんでしょうか?(テレビや映画を見ないので、有名人に疎い)

 もうひとつ印象的だったものとして、オデュッセウス。この作品では知将の1人に過ぎませんが、トロイ戦争を終える木馬の発案者で、トロイ戦争後を描いた叙事詩『オデュッセイア』の主人公です。
 まず、役者さんが元ジャニーズの男闘呼組の人でした。このグループはよく知らないのですが、この人は解散後役者さんになったんですね。演技は、「まずまず」でしょうか。出番少なかったし、感情の変化少なかったから、いまいちわかりませんでした。場をさらう演技をしたアキレウスとトロイア王を見ているから、彼らと比較してしまうと酷だろうし。ま、そんなことはいいんです(失礼・蹴)
 作品中で、トロイア戦争を終えた彼の「木馬」策が「神をあざむく卑怯な戦い」と繰り返されていたことに、カルチャーショックを受けました。
 当時の戦いって「昼間、神々のごらんになっている下で」行うものだったそうなんですよ。だから「あと一歩で勝てる」という状況でも「日が暮れた」の一言で、互いに自分の陣地に引き返さないといけない。ある意味フェアな戦いだった。それを、オデュッセウスが「策」という「敵を、神様をあざむく」手段を持ち込んだ。この結果が、現在のような戦争につながっていく……という。私は「オデュッセウス」という人物を「長年にわたる戦争をようやく終わらせた功労者」だと思っていたので、(負けたトロイア人の意見としてでなく)第三者的な立場で彼が非難されるべき行いをしていたのだということが驚きだったんです。
 最近仕事で「動物は、かなわないと思ったらすぐに降伏するし、降伏したものを追い立てるようなことはしない。でも人間はどこまでも残酷だ」という文章を読んだこともあり、オデュッセウスの功罪について色々考えてしまいました。

 この他の感想は、簡単に。

 口誦詩といわれるだけあって、言葉のひとつひとつが選び抜かれている印象を受けました。書くための言葉でなく、口にするための言葉。女性陣の言葉がもう少し、ひとつひとつはっきりと聞こえたらより良かったんだけどなあ。そこはちょっと心残り。
 次に殺陣。アキレウスとヘクトルの殺陣がかっこよかった。ギリシア時代の人々の戦い方って全然知らないので(映画では色々あるのでしょうが、未見なので)、盾をガンガンぶつけあうのとか、面白かった。殺陣のできる役者さんの演技は大好きです。
 演出も、細かいところがいろいろ良かった。プロローグで「英雄」というものを緋色の布で表現していたのですが、その比喩が、アキレウスや彼の親友、ヘクトルを表すのに使われているのは良かった。個人的にはボロボロになった緋色の布(トロイア陣営のヘクトルは青色の布)が彼らの「死」(遺体)を表す演出は秀逸だったと思います。ぼろぼろの布を抱きしめて泣く演技は美しかった。

 そして最後に繰り返しになりますが、主人公アキレウス役の内野聖陽さんの演技はやっぱり素晴らしかったです。クライマックスシーンは書いたけど、他にも、引きこもり中のやる気のない様子とか、親友が出陣するときの世話女房ぶりとか、親友が死んだときの演技(親友の姿が見えなくなった不安~母親女神の「伝令が来ても誰もあなたに伝えたがらないから」と親友の死を伝える展開も含めて~激しい悲嘆、そして怒りへ転ずる様子)とか、殺してもまだ許せないヘクトルへの怒りとか。そしてトロイア王に会って怒りが消えた後のヘクトルの葬儀中、横を向き、視線をそらしてただ座っている演技とか。
 やっぱり素晴らしい役者さんだなあ、と感嘆ひとしきりでした。満足。

スポンサーサイト
この記事のURL | 舞台・芝居 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
<<歯科医通い終了。 | メイン | すみもほしいかな(BlogPet)>>
コメント
コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top

トラックバック
トラックバックURL
→http://12nocturne16.blog72.fc2.com/tb.php/618-a7405acb

| メイン |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。