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コンフィダント・絆
2007/04/20(Fri)
 三谷幸喜サンの新作芝居もみてきました。最後列の端から○番目だたので役者さんの表情が全く見えなかったのはとても残念ですが(オペラグラスは使わない主義)、ホンも役者さんもとっても良かったです。

 つーかね、あの最後のシュフネッケルの台詞、せつなすぎる……!(涙)

 以下ネタバレ感想。
 依存症@ゴッホ(生瀬勝久さん)、万能タラシ@ゴーギャン(寺脇康文さん)、点描の人@スーラ(中井貴一さん)、アトリエのリーダー@シュフネッケル(相島一之さん)、モデル女性@ルイーズ(堀内敬子さん)、ピアニストさん(BGM専門なんだけど、たまにお芝居に混じってる)が登場人物。画家4人が借りたアトリエで、ルイーズをモデルに4人で絵を描く一ヶ月のドタバタ劇です。三谷作品なので、基本(少なくても表面上は)バカばっかりやってるんだけど、内面でそれぞれがそれぞれが抱えている苦悩を丁寧に描いていました。

 たとえばゴッホは甘えん坊やで悲観主義的なダメ人間だったり、ゴーギャンはオールマイティな遊び人なのに絵についてはゴッホにコンプレックスを抱いていたり、スーラは秘密主義で他の3人より世間的評価が高いことに内心安心していたり、シュフネッケルは絵の才能がまるでなかったり(しかも本人は自覚してない)と、それぞれがダメなところを抱えている。で、それぞれが自分のコンプレックスに打ち負かされるたびに、ルイーズがあたたかく歌うんです。「だいじょうぶ、あなたはすごい(良い)人だから」って。1幕で2人、2幕で2人ずつ。
 その一方で、田舎からパリに出てきて頑張ってるルイーズも、パリジェンヌになれない、田舎くさいと指摘されて落ち込むときがある。そのときは、おっさん画家4人が必死で彼女をなぐさめる歌を歌うんです(彼らが彼女になぐさめてもらったのと同じメロディで)。最初は「笑って」とハモっても泣かれちゃって、4人でアタフタと相談して「もう一回」と話をまとめて(ピアニストさんに合図送って)もう一度歌う。二度目の歌で彼女が笑ってくれて、みんなで歓喜する(そして1幕終了)。話の流れ的にも、盛り上げ方的にも良かったと思います。

 1幕は不器用な画家たちが時折衝突しながらも親しげに絵を描こうとしているのに比べると、2幕は「芸術家」としての顔が表面に出てきます。1幕でダメ人間ぶりを披露していたゴッホが実は4人の仲間の中で一番才能あることを、描きかけの絵を見たゴーギャンやスーラの反応や、本人の絵を描く様子で見せていく。ゴーギャンもスーラも、その絵に激しく感動するのに、同時に芽生える嫉妬を抑えられない。たとえば絵の色使いに感動して説明を求めても、ゴッホの発言を理解できない(ゴッホの感性に追いつけない)。しかも、現時点でものゴッホの絵にすでに打ちのめされるほど感動しているのに、ゴッホ自身には「こんな中途半端な作品、恥ずかしくて世間に出せない」とあっさり言われてしまう。そうして、才能があるゆえに才能を知る画家は、ゴッホの作品の素晴らしさを本人に語らず、嫉妬にかられた行動を選んでしまう。
 スーラが親切さを装って「君の昔の絵の方が好きだよ」と言うを聞いたとたんに、それまで幼げ(絵バカな純真無垢)だったゴッホが真顔になって「今の僕の絵はダメってことか」と激昂して、自分の描いていた絵をナイフで引き裂いてしまう。ゴッホが去った後、引き裂かれたゴッホの絵を抱きしめてスーラが泣くところなんて本当に切ない。美を求める者としての作品への憧憬と、ライバルとしての作者への妬みがごちゃまぜになってて。
 そして「4人」のアトリエは、3人の芸術家にとって「絆」だった、みんなを仲間だと固く信じていたシュフネッケルに向かって「画家」としての彼を否定することで、終わりを迎える。3人にとって自らは「芸術家」であり、他の2人はそれぞれ「すごいライバル」だった。でも、3人にとってシュフネッケルは「良い人」でしかなかった。良い人の作るほっとする空間で仲良くしてたけど、結局「良い人」を「画家」として認めれらない以上、芸術家仲間ではない=一緒にいる理由はないから。自分の画家としての才能のなさを指摘されてショックを受けたシュフネッケルが、それでもみんなと一緒にいたいと引き止めようとするのに、3人は出ていってしまう。最後に、ただ一人残ったモデルのルイーズに、シュフネッケルは自分が描いた絵を見て、言うんですよ。

 「このアトリエで僕が描いた絵には、3人の画家(ゴッホ・ゴーギャン・スーラ)とモデル(ルイーズ)がいる。でも、この絵の中に、僕はいないんだね」

 きっと、利害関係も嫉妬もなく、誰よりも純粋に3人を大切に思っていたシュフネッケルが、ひとりだけ仲間に入れない。その思いがとにかく切なくて……(泣いた)


 役者さんは、どなたも素晴らしかったと思います。最後列で皆さんの表情が見られなかったのは本当に残念で仕方ありません。
 ゴッホ@生瀬さんは、ダメ人間やってるときと、絵に真剣に向き合うときの対照的な演技が素敵でした。スーラに絵を批判されたときの激昂した演技が特に好き。舞台では、空間がその役者の出すオーラ(?)に染まって、目が離せなくなるようなことがたまにあるのですが、久しぶりに見た「ひきずりこまれるような演技」でした。やっぱ上手い人だよなあ(もともと生瀬さんの演技は好き)
 ゴーギャン@寺脇さんは、カッコイイ系の演技。堅実な役作り、という印象でした。色男・オールマイティ設定なので当然ですが、もうちょっとアホな面も見たかったかも。スーラに救難信号を送る姿は好きです(笑)
 スーラ@中井さんは、前半のルイーズにちょっかいを出しきれないダメ人間ぷりも可愛かったけど、後半のゴッホへの嫉妬が秀逸。特に、引き裂かれたゴッホの絵を抱きしめて号泣するのを見たときは、本当に切なかった(涙)
 シュフネッケル@相島さんは、シュフネッケルの「人の良さ」が最初から最後までにじみ出るような演技でした。ものすごく「平凡」な登場人物であるがゆえに、難しい役のはずなのに、「がんばって演技してるな」と思わせるのでなく、さらりと見せてましたね。シュフネッケルは最後の台詞が全てをもっていきました。みんなに自分の芸術的才能を否定されても、去られても、それでもみんなを大好きな彼の孤独が切なくてたまりません。

 おまけ。
 2幕が三谷さんのアコーディオン生演奏ではじまるとは思いませんでした(笑)。朝日新聞のコラムでアコーディオンやってるって読んだ気はするけど、地道に頑張ってるんだなあ。上演中はちょこちょこ劇場に足運んでるみたいだけど、毎日ではないらしいので、三谷さんの出る日にあたって嬉しかったです。

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